小児科医 中村弓美の診察室
傷の手当
怪我をしたときの傷の手当ては、どのようにしていますか?
「赤チンをつけて、チチンプイプイとおまじないを言っておく。」
これは、私が小さい頃の普通の手当て。
「オキシドールや、イソジンなどの消毒液をつけてから、バンドエイドやガーゼで保護する。」
これは、小さい頃の我が家の子ども達にしていた手当て。
今は、
「水道水で洗い、水気を拭いて、白色ワセリンを塗り、ラップでぺたんとフタをする。」
なんです。
クリニックにも、怪我や火傷の患者さんは、大勢来られますが、基本的に、この手当てを行っています。
消毒液は、使いません。
傷は、消毒液を使わず、乾かさないのが一番。
アトムなどの漫画に出てくるクローン動物はどうやって作られていたか、覚えていますか?
必ず、水(培養液)の入ったカプセルの中で、大きく育ってましたよね。
乾いたところでは、細胞は、生きることが出来ず、再生することができません。
私たち人間や動物は、皮膚という特殊なバリアスーツを着込んでいるので、乾燥から守られていますが、怪我をしてその皮膚をはがれたとたん、その部分の皮膚は、乾燥のため再生するのが困難になります。
乾燥に対抗するため、カサブタを一時的に作って、その中でとりあえずの修復作業を始めます。
もし、乾燥せずに済めば、再生するための新しい赤ちゃん細胞をたくさん含んだ浸出液が、一杯出てきて、カプセルの中でクローン動物が大きくなったように、皮膚を元通りの状態に戻すことが出来ます。
細胞一つ一つが、その場所がどのような形であったかを覚えているので、元通りの形に戻すことができるのです。
指先を、スパっと切ってこられた方に、この湿潤治療をすると、もこもこ指の細胞が盛り上がってきて、ほぼ元通りの指になって治っていかれました。
(包丁で指先をそぎ落とし、出血がとまらない。と、よく来院されます。)
もし、乾かす治療(消毒液とガーゼ)をしていれば、きっと、治ったときには、切り取られた先が凹んだ状態のままだったでしょう。
この乾かさない治療:湿潤治療は、夏井睦先生から教わりました。
新しい創傷治療として、各地で啓蒙のため講演されています。
外科や脳外科の世界の先生方も、少しずつ、考えを変えていかれているようです。
おうちで出来る簡単な傷の手当(怪我の治療)を、ご紹介しますね。
- 水道水でよく洗う。
- 傷と周りの皮膚の水気(みずけ)を、ふき取る。
- ワセリン付ラップを傷のところに貼る。
- ラップを固定する。
- 包帯で巻く。またはガーゼを上から当てる。
- 手当てを毎日繰り返す。
水道水で、傷とそのまわりの皮膚をよく洗います。もし泥などが傷の中に残っていると、化膿する原因になりやすいので、しっかり洗い流します。もし残っているときは、きれいな歯ブラシなどで、軽くこすって落としてもいいです。
傷と周りの皮膚の水気(みずけ)を、タオルやテイッシュでふき取ります。こすらず、軽く押し当てるようにします。傷口から出血しているときは、タオルなどで直接押えて圧迫します。しっかり押えて動かさないようにすれば、ほとんどの場合とまります。止まらないときは、病院へ行きましょう。
ラップを傷の大きさより大きく(周囲1−2cm以上)きります。そのラップに、白色ワセリンやプラスチペースを薄く塗りつけ(パンにバターを塗りのばすように)、傷口にぺたんと貼り付けます。傷とラップの間に隙間が出来ないように、ぺターンと貼るのが大事です。
ぺたんと貼り付けたラップが動かないように、絆創膏やテープで固定します。
傷口が深めのときは、浸出液がたくさん出てきますので、このラップの上からガーゼやハンカチを当てます。そして包帯で巻き巻きして固定します。間違ってもガーゼをしてからラップをするのではなく、ラップをしてから、浸出液を吸収させるため、また固定のために上にタオルやガーゼ等をあてます。
この手当てを、毎日繰り返します。浸出液が多いときは、1日2回手当てします。数日後、ピンク色のつるつるの表皮が再生されたら、ラップをはずして出来上がり。
*傷の場所が日に当たりやすい場所であれば、日焼けによる色素沈着を防ぐために、その後2ヶ月くらい日焼け止めを塗ります。
この手当ては、火傷にも応用できます。
詳しく知りたい方は、夏井先生のHP:新しい創傷治療に行ってみてくださいね。。
