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小児科医 中村弓美の部屋

小児科医 中村弓美のエッセイ・雑記

今こそ武道の精神で

TVでドキュメントを見た。 「ただ一撃にかける」−剣道の世界選手権、日本は連覇をかけ、団体決勝へ。 対するは韓国。大将戦で決着がつかず、時間無制限の一本勝負、代表戦にもつれ込む。 向かい合った二人の張り詰めた気迫。静かなつばぜり合い。 動いたかと思ったその瞬間、鮮やかなのど元への突き。 無心を追い求めた日本代表、その会心の一撃だった。

映画「たそがれ清兵衛」では、うだつの上がらない清兵衛が、討手を命ぜられ、娘達の寝顔を見た後、深夜刀を研ぎ・・・。 印象深いシーンだ。死を覚悟し、恐怖に立ち向かう。 その姿は、凛として静かだった。清兵衛は、戦いをやめるよう説得しながら、余吾善右衛門に何度も切られた末、ついに小太刀を抜いた。 両者に共通するのは、困難と立ち向かい、自分の全人生を、一瞬に生きようとする壮絶さである。

空手する子ども達

日本には剣道、柔道、空手道など、多くの武道がある。 現在のさまざまな武道に分かれる以前の古武術は「和(やわら)」と言われ、その本質は自己と自分の周囲との調和にあるという。 剣や技は、あくまでも自己を戒めるためのものであり、怒りや恨みの感情に流されず、戦いを避け調和を求める手段であろう。 この精神を求めて、武道を学ぶ人は世界中に広がっているようだ。

ところで、宗教上の争いや、経済的利害の対立のゆえに、地球上のあちこちで紛争がおこっている。 日本も、自衛隊のイラク派遣問題をはじめとして、さまざまに揺れている。 しかし、世界の平和と日本の平和は、別個ではありえないと思う。

武道の本家である日本は、その本質である「調和」を武器に、世界平和のリーダーシップをとってほしいと願っている。

(平成15年11月22日 熊本日日新聞 夕刊「今日の発言」掲載)

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