小児科医 中村弓美のエッセイ・雑記
少子化対策に一案
研修医の頃、「赤ちゃんの状態は、母親が一番良くわかっている。 母親がどこかおかしいと言うときは、その言葉を聴きなさい」と教わった。
「熱がある」と子どもをつれて駆け込む母親たち。「食欲は?機嫌は?」と問いかける。 「保育園に預けていたので・・・」「おばあちゃんにみてもらっていたので・・・」と、あやふやな答えしか返ってこないことがある。 子どものことを一番わかっているのは、だれになったのだろう。
私自身の子育てを振り返っても、仕事を終えて保育園にお迎え、食事を作って風呂に入れ、着替えをさせて洗濯物・・・、 もうそれだけで毎日があっという間に過ぎていった。 子どものことをどれだけわかっていただろうか。

子どもがもっともよく育つのは、周囲に愛されながら、子どもたちの集団の中で育つときだ。 今や保育園にいかなければ、遊び相手を探すのも難しい。 専業主婦であっても、保育園に子どもを預けることが必要だとさえ思う。 保育園の果たす役割は大きい。それでも、やっぱり子供のことを一番わかっているのは母親であるはずだ。
しかし、その母親たちが疲れている。肉体的に、精神的に、そして経済的に。 人はだれでも疲れているとき、イライラするし、自分のことだけで精一杯。 疲れきった母親には、子供の声に耳を傾けることも、その小さな変化に気づくことも難しくなるのではないか。 このような状況では、子どもを産もうとする意思さえ失われてしまう。
一案だが、子育て支援として乳幼児一人に一律、月数万円の育児手当を出してほしい。 「社会の宝」である子どもたち。その子育て支援は急務だが、それより先に母親達の生活疲れの軽減を図ってほしい。
(平成15年11月1日 熊本日日新聞 夕刊「今日の発言」掲載)
