小児科医 中村弓美のエッセイ・雑記
変わる!大きな喜びに
『五体不満足』を書いた乙武洋匡さんは「障害は不自由だが不幸ではない」と言った。 しかし、多くの人は、「障害は不幸だ」と思っているのではないか。
「自分の子どもに障害があるとわかったら、どう?」看護学校で障害児の看護について講義したとき、学生に聞いてみた。 「子供や自分が他人とは違う世界に入ったように感じる。」「世間の目が冷たく思える」 「苦労が多く大変に違いない」「将来を悲観する」など、やはりマイナスイメージが多かった。
実際、私が応じた子どもの発達相談でも、障害を告げられた親は、ほとんどがショックを受ける。 それまで障害は他人事でしか無かったのに、突然谷底に突き落とされたような気持ちになるのかもしれない。 普段の生活の中で持っていた、障害に対するイメージに、自分自身が傷つくようだ。
しかし、ほとんどの障害は突然起こる。原因不明のものが多いし、事故や病気によるものもある。 つまり障害はだれにでも起こり得るものだ。 障害をもつ子供を見たとき、「私や、私の家族でなくてよかった」と思うことと、 障害という現実に直面して「自分だけが苦しみを背負った」と非常につらく感じることは、表裏の関係ではないか。
障害は不自由で厳しい現実だ。障害と共に生きることは、谷底から急峻な崖を登るようなものかもしれない。
それでも、一歩一歩登り始めた親と子は、皆たくましく力強くなり、子どもの小さな成長に、誰よりも大きな喜びを実感できる。
「障害は苦労だが、不幸ではない。大きな喜びにさえ変わり得る」
そう、私達一人ひとりが見方を変えて初めて、障害を持つ子、そして、その子たちの親を応援することになると思う。
(平成15年10月18日 熊本日日新聞 夕刊「今日の発言」掲載)
