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小児科医 中村弓美の部屋

小児科医 中村弓美のエッセイ・雑記

共感する

年も押し迫り、この最後の原稿を書いている。 夫はビールを片手にくつろぎ、行方不明者探しのTV番組。 その中で、外国の呪術師が、日本の行方不明者の写真を手に透視による捜索を行うという。 どうして?そんなことが本当にできるのかしら。

夫と柴犬チャコ、そしてその子リリー。

自分なりに考えた。 私が「生きている」と意識するのは、魂が揺さぶられた時だ。 その魂は多分、殻に包まれた自分の無意識の中にあって、 そこから他の魂と“トンネル”みたいなものでつながっているのではないか。

例えば、音さが他の音さを鳴らすように、魂も揺さぶられ、他者の魂と共鳴する。 それが「共感する」ということだろう。 ただ、共感するということによって、生命の危機にさらされてしまう場合もある。 近年、頻発する集団自殺も恐らく、そのせいではないか。

しかし、共感は他者の魂を揺さぶることで、苦しむ人や悩める相手に、希望を与えることができるのだ。 その上、自分自身を鍛え上げていけるはず。

私たち医療者は、病や障害のある人が抱いている苦悩に立ち向かうのが、生業だ。 そして、それらの悩みや、苦しみに対する真の救いは、 単に医学的な技術ばかりに頼んで求められるのではなく、相手の患者と共感することによって、初めてもたらされると信じている。

弘法大師が中国から持ち帰った「諸尊仏龕」を見た。 如来を中心に菩薩たちが、人生をあるがままを受け入れて、笑っているように思えた。

私も、今の自分をあるがままに受け入れよう。 そして、人生の楽しみばかりか、苦しみ、悲しみも何もかも受け入れることができる自由な心を持つ医療者になりたい。

(平成15年12月27日 熊本日日新聞 夕刊「今日の発言」掲載)

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