小児科医 中村弓美のエッセイ・雑記
男と女、だから年金は・・・
年金危機が叫ばれている。 議論を呼ぶさまざまな問題の中で、専業主婦は、“ヒロイン”のようだ。
例えば、20億年前の太古の生物−細胞たち。 彼らは環境の変化を乗り切るために、自分とは性格や能力が可能な限り異なった他の細胞と合体、 お互いの欠点を補い、利点を利用しあう関係を作った。 そして、ミトコンドリアを内蔵して現在の私たちの身体を構成する細胞も、 硫化水素の中で生きる細胞と、酸素を有効利用する細胞が合体したものだ。
次の世代の生命を育むための生殖活動では、精子と卵子。 精子がその旺盛な活動の一方、卵子はその不動性と栄養にそれぞれ象徴され、互いの性格は異なる。 中間型の生殖細胞も数多く出現はしたが、両極をなす相反する性格を持つ細胞しか残らず、今の形に至ったといわれている。
夫婦関係にもあてはまるのではないか。 お互いに悪いところはカバー、良いところを生かし合う。 より機能的に“収穫する”能力と、育児に都合よく家庭を守るのに適した能力。 これらは本来、人間がより有利に生き抜くという点で、対等の能力であろう。

密教の曼荼羅で金剛界と胎蔵界に示されるような力と形、その二元論的な宇宙観。 男は力を、女は形をそれぞれ表す。 男と女は本質的に異なっているが、本来的には対等であり、相互依存の関係にある。
とすれば、現代の法制に矛盾はないのか。 本質的に異なる男と女に、同じ能力を求め、形の上だけの平等を強いているのではないか。 専業主婦の年金では、実質的な平等を図ってほしいと思う。
我が家にはメスの柴犬がいる。5匹と7匹、これまで2回出産。人間同士の夫よりも、むしろ母犬の方に共感を覚える?ことも。
(平成15年12月6日 熊本日日新聞 夕刊「今日の発言」掲載)
