小児科医 中村弓美のエッセイ・雑記
母乳のほうが優れている

「母乳のほうが優れている」
そう、何となく感じてはいても、「自分のおっぱいでは足りないみたい」 「産後すぐに働かなくてはならない」「お出かけ時にはミルクが便利だ」―などの理由で、多くの若い母親はミルクで育児をしている。
たばこが体に悪い−と、“分かっていても“なかなかやめられないように、 母乳育児も”分かっていても”できない、選べない選択肢の一つだと思う。
禁煙は、愛煙家自身が喫煙の仕組みを理解した上で、周囲の人々にも分かってもらって初めて可能になるといわれる。 母乳育児だって、その意義や方法についてもっと広く認知される必要があるようだ。
妊婦の場合、母親教室が開かれているが、まず何より彼女たちを支える周りが母乳育児について理解していることが重要。 なぜなら、出るおっぱい、出ないおっぱいが初めから決まっているわけではなく、 産後の環境こそ「母乳育児ができるかどうか」の決め手だから。
ユニセフとWHOは「母乳育児を成功させるための十か条」を提唱し、 @母子同室(産後直後から赤ちゃんを母親と一緒の部屋で過ごさせる) A出産後30分以内に、おっぱいを吸わせる−など、 簡単にできて、その後のおっぱいの出方を大きく左右する具体的な方法を教えている。 そして、この十か条を実践している病院を「赤ちゃんにやさしい病院」に認定。熊本市民病院も今年、新たに認定を受けた。
母親たちが安心して母乳育児を選べるような社会であってほしい。 それを実現させるため、そして、先に発表された熊本県「乳児死亡率ワースト1」の汚名返上のためにも、 今もう一度、母乳育児を皆で考えてみませんか。
(平成15年10月4日 熊本日日新聞 夕刊「今日の発言」掲載)
